コールドメールは営業マンやマーケターが嫌う営業手法の一つ。理由は単純で、結果がなかなか出ないのに手間がかかるというのを億劫だと感じるからです。しかし心理学に基づき正しい対策が講じられたコールドメールは、最終的に良い返信率を獲得し、B2Bの営業ツールとして無視できない武器となります。
そこで本稿では、ハーバード大学のビジネスレビューに基づいたコールドメールの書き方に、私自身の実体験も織り交ぜつつ、日本人が英語で外国人相手にコールドメールを送る際の秘策を6つ紹介します。
メールの文章は相手に合わせて変更する
当たり前のようにも思えますが、結局のところ、コールドメールにおいてこれが最も効果的です。では例文を見てみましょう。
Subject: {{first name}}
Hi {{first name}}, I am giving away 100 licenses to CVPMs to use the xxxxxx free for six months. If you’re interested, please let me know, and I’ll set up your account!
Cheers,
Yuki Nagahori
送る相手によって名前をカスタマイズすることは決して新しくはなく、むしろ自動化された当たり前のテクニックとなってきています。むしろ上記の例文で大事なのは、CVPMという言葉を入れていることです。
CVPMとは、認定獣医診療マネージャー(Certified Veterinary Pratice Manager)の略です。このメールを受け取った人は、自分がCVPMに認定されていて、だからこのメールを受信したと認識します。
例文ではCVPMが使われていますが、ここを例えばCEOであったり、何か別の組織の名前に代替して応用できます。要は、自身のステータスなどこのメールが届いた理由だと思わせ、一斉送信されたものではないと認識されるわけです。
また、メッセージのトーンにも注目してください。明るく、高いモチベーションを感じさせるようなトーンでメールを書くことで、 „あなたと連絡を取りたい” と思わせることができます。
【ポイント】
- 名前をパーソナライズする
- 一斉送信と思わせないように相手のステータスなどに触れる
- パッションを感じさせる
ただし注意点として、どの国の人に送るかによってローカライズは必要です。アメリカ人相手であればファーストネームで送っても問題ありませんが、例えばドイツではメールの内容、相手の役職によっては不適切と見なされるケースもあります。
ちなみに、コールドメールにおいてはフォローアップメールを送ることが鍵となります。何度も送ったらしつこいと思われないか?と心配になるかもしれませんが、そのようにマイナスに捉えられるのは実はレアケースです。
そもそもコールドメールとは読まれない、目に留まらないが当たり前の世界。
- 見落とされている
- その時は興味がなかった
- 後回しにして忘れた
返信が来ない、もしくはクリックされない原因にはこのような理由も含みますので、深く考え過ぎず、シンプルにフォローアップしましょう。ちなみに、一度フォローするだけで、メールの開封率と返信率が下記のように改善された事例があります。
Sent: 25
Opened: 24% (6) → 36% (9)
Clicked: 4% (1) → 4% (1)
Replied: 16% (4) → 20% (5)
自分の信頼を高める
有象無象の迷惑メールと自身のメール/メッセージの一線を画すには、自身のアカウントの信頼性を上げるという方法があります。
グーグルのSEOにおいても権威性・信頼性の重要度が日々上がっていますが、コールドメールにおいても、自分が信用に値する人物だということを相手に伝わりやすくすることで、返信率が劇的に改善されます。
- Podcastを配信する
- 本を出版する
- ライセンスや資格の保持を示す
- 所属するコミュニティが同じなどの共通点を見つけて示す
- 知り合いを通じてコンタクトする
Subject: Ideas & Feedback for xxx
Hi {{first name}}
I am reaching out because I thought you might want some free advice on installing new chamber. I’m an engineer of environmental equipment with 10 years exp. The company is one of the most famous Japanese manufacturers in this field. Are there any improving challenges you’d like to get advice on?
Cheers,
Yuki Nagahori, MBA
Your picture
LinkedIn
CEO
信頼性を高めるポイント
- 会社の強さを明確に掲示
- 伝わりやすい実績を入れる
- 自身が専門家であることを伝える
- より信頼性の高い組織や機関との連携があれば、その名前も使う
ギフトカードで釣る
コールドメールを無視する人の心理は、警戒やリスクヘッジがメインです。これらは当然の心理であり、メールを送る側も、同じように数多くのコールドメールを無視しているはずです。
つまり、リードに対して、明確で分かりやすいベネフィットを用意すれば、返信率が高まります。マーケティングの世界ではこのギフトカードのような施策には反対意見を持つ人もいますが、ROIが高く、一度試して損はない手法です。
このギフトカード作戦が特に有効なのは、商品単価やサービス単価が高いB2B、そして情報収集を目的としたリサーチです。ギフトカードは誰しもが使いやすいAmzonがおすすめ。コストは25€から100€程度を目安にしましょう。
【キャンペーンの結果一例】
ターゲット数:290
エンゲージメント:33.8%
設定したミーティング毎のコスト:114€
キャンペーン総コスト:5k€
セールスチャンス:25
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端的に、シンプルに、反応しやすいように
個人的に受信したコールドメールをお見せします。内容がとにかく長く、パーソナライズも一切されていない、十中八九スパム、もしくは詐欺と思われても仕方のないような内容です。

伝えたいことが多いというのはコールドメールにおいて主観的過ぎます。極力、文章は短く、かつ信頼性が高まるような情報を入れたり、スパムと思われないような情報を組み込んで、クリック率と返信率を高めましょう。
従順さと感謝を示す
海外でプレゼンスを発揮するためには、特に日本人の場合、「自分の主張を持て」「発言をしろ」といった点を意識する傾向があるはずです。しかし、コールドメールにおいては、どちらかと言えばキャラクターとして従順さを漂わせる方が賢明です。
例えば、コールドメールの中に「Thank you so muh! I am really grateful」や「It’s fine if you are too busy」というフレーズを入れただけで、返信率が二倍に増えたデータがあるほどです。
ポイントは、感謝をすることでそれに応えなくてはいけないという心理を働かせること。そして、忙しければ大丈夫ですよ、と相手に逃げ道を与えることで、受信側は助けたいと思う気持ちがより強くなります。
Jonah Bergerの著書「The Catalyst: How to Change Anyone’s Mind」でも紹介されていますが、人の心を動かすには…
- 選択肢を与えること
- 主導権を握っていると思わせること
…が鍵だと記されています。例えば、物価の安い国でタクシーに乗り、観光客だからと相場の倍の価格を請求されたとしましょう。本来であれば、10€程度だったはずの距離で20€だと迫られました。当然、高くないか?と会話をします。するとタクシー運転手は、「払いたくないなら払わなくてもいい。無料か20€かのどちらかだ」と強気に応対します。
このような選択肢を与えられると、さすがに無料というのは申し訳ない、という気持ちになり、20€を支払ってしまうのです。選択肢が与えられたことで、自ら高い金額を払うという選択をさせられた例です。
B2Bのコールドメールにおいても、You are too busy. You are in control. I’m submissive.という状態をそれとなく暗示することで、相手には「良い人でありたい」という心理が働き、より高確率で返信が来ます。
本来、様々な心理学の研究では、「すぐに同意しない人」「Noと言える人」「直接的な発言ができる人」「給与交渉ができる人」の方が所得が高くなるというデータが揃っています。しかし、B2Bのコールドメールで、「何か物を売りたい」「事業を立ち上げたい」「提携先を探したい」という状況においては、物事に同意できる姿勢、従順さといった側面を見せる必要あるのです。
【ポイント】
- 従順さ
- ただの「Thanks」で終わらない
- 良い人であろうとさせる
時間をかけて、本気で、パーソナライズしたコールドメールを送る
ツールを使ってリードを管理し、フォローアップメールを自動送信することは悪いことではありません。しかし、いくら目先のHow-Toを実行しようとも、最初の段階できちんと時間をかけ、パーソナライズされたコールドメールの返信率には勝つことができない分厚い壁があります。
マーケティングチームもやはり人間であって、徐々に怠惰や惰性でコールドメールを作成するようになります。そうなるとやはり良いパフォーマンスを発揮する確率が下がるというわけです。
私も以前、ドイツの各方面の行政機関にアポを取らなければならない仕事を依頼されたことがあります。日本からドイツ視察に来る派遣団のために、州レベルの公的機関でそれなりの役職に就いているドイツ人にアポを取り付けるため、コールドメールをしました。
その時に意識したのは、「カスタマイズ」「信頼性を示す」「分かりやすい」「従順さ」の4点です。日本は文化的に、誰かの紹介など横のつながりでアポ取りが成立するケースが散見されますが、ドイツでは元から人脈がなくても、誰が何の目的で訪問したいのかがロジカルに説明されていれば、コールドメールでも人は動いてくれます。 その時の返信率は50%を超え、成約率も約25%。結果的に最高の視察を実現することができました。