ランディングページ最適化のための10の極意~ヨーロッパ編~

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Yuki Nagahori

Yahtec Japan代表 - 日本語・英語・ドイツ語のトリリンガル。日欧間のウェブマーケティング、経営企画、事業立ち上げ支援担当。

「郷に入っては郷に従え」とのことわざ通り、欧州へ進出した日本企業は現地人が好むタイプのマーケティングを行わなければなりません。人間は人間ということで共通する部分もありますが、文化や言語、歴史的背景の違いにより異なる部分もまた多く、やはり日本のやり方をそのまま持ち込んでも成功はしません。

本稿ではマーケティングの中でもランディングページに焦点を当て、ヨーロッパ、特にドイツ語圏の地域ではどのようなデザインや書き方がより高いコンバージョンに繋がるのかを徹底的に解説します。

構成は極力シンプルに

„分かりにくいLP“ というのは言語に関わらず離脱に直結してしまう原因となります。ということは、国は関係ないのでは?と思うかもしれませんが、決してそうではありません。ドイツ人などをターゲットにする場合は、日本の感覚よりさらにシンプルな作りを意識して、やっと丁度いい程度です。

理由はいくつかあります。一つ目は、アルファベットの方が文字が長いこと。内容は全く同じことを言っていても、日本語の方が短くまとまり、逆にドイツ語や英語では幅を取り、長文に見えます。そのため、仮に日本語では短くまとまっていても、ローカル言語にしてもなお、コンパクトにまとまるように調整しましょう。

アルファベットの文字量が多い

二つ目は、そもそも日本人の方が情報量が多いことに価値を持ちやすい性格だということです。会社のプレゼンテーションひとつを取ってみても、文字量・情報量は日本の方が圧倒的に多い傾向があります。

テレビを比較しても分かりますが、日本は画面上に情報が多いです。発言している演者に加え、番組タイトル、テロップ、リアクションのワイプなど、とにかかく追加情報に溢れています。

それが良い悪いとジャッジしているわけではありません。ただ単に、ヨーロッパのテレビではそういった情報は必要とされておらず、こちらのスタイルに合わせるべきだということです。

①アルファベットだということを意識して、テキスト量はさらに少なくする
②複数のオファーなどを用意するのではなく、CTAボタンは一つのみの設置にする
③CTAボタンは背景色とは反対にして分かりやすくする

グローバルメニューを削除する

上述の「シンプル」に繋がることでもあるのですが、グローバルメニューを削除して、とにかくオファー内容にのみ集中させるように誘導しましょう。グローバルメニューに限らず、サイドバーやポップアップなども全てOFFにして、一瞬たりとも注意が反れるような動線を排除してください。

ランディングページ最適化

ランディングページは、ウェブサイトとは異なる位置付けです。会社概要やその他の商品を紹介する物ではなく、売りたいものを買ってもらうためだけに存在することを忘れないようにしましょう。

オファー内容は最も目につきやすいところに配置

これは国は関係ない項目ですが、訪問者に一番伝えたいオファー内容は最も目につきやすいところに配置してください。ちなみに英語では “Above-the-fold” というテクニックに該当します。直訳すると「折り目の上に」という意味で、要は上部、ないしは最も目につきやすいところに配置するというニュアンスになるわけです。

LPにおけるabove the foldとは?

オファー内容は以下の4つに絞るとシンプルな構造・内容になります。

  1. CTAのボタン
  2. 何を得られるのか
  3. オファーのUSP(3~5つ箇条書きで、より大事なことを先に)
  4. 写真などのイメージ

視覚的なヒントも提供する

訪問者が仮に買う気があったとしても、次に何をしたらいいかよく分からないと、そこで離脱率がガクッと上がります。それを視覚でもサポートしてあげるのがベターというわけです。

つまり、例えば背景写真に人がいるのであれば、その人の目線や指をさす場所がCTAボタンの方を向いている、または直接的に矢印を使ってCTAボタンを強調させてあげる、などです。

こうすることで、訪問者は次に進むにはどうしたらいいか明確に認識できるため、離脱率が下がります。

„Hero Shot“ を使う

Hero Shotとは要は写真のことです。文字だけでは誰もボタンを押してくれないため、第一印象で訪問者の心を掴むために、写真を使いましょうという話です。「なんだそんな当たり前のことか」と思われたかもしれません。

ところが、このHero Shotの選択が思いのほか難しいのです。では何を意識して写真やイメージを選んだらよいのでしょうか?

実物がある製品の場合

実物がある場合は、当然のことながら製品写真を載せる必要があります。システムなど、バーチャル製品の場合は使用中のスクリーンショットの活用もありです。

抽象的な商品の場合

では、実物がない商品の場合はどうでしょう?例えば、旅行代理店、銀行の金融商品、保険を売りたい場合は、その商品から連想するモチーフを採用してください。ロンドンへの旅行へ駆り立てたいならビッグベンやロンドンアイが定番となります。

サービスが商品となる場合

自分を売り込む芸能人であったり、その他のサービスが商品となる場合は、従業員などの写真を使うと、サービスを受ける際の想像がしやすくなり、コンバージョン率が高まります。

架空の人物やネットに転がるフリー素材ではなく、極力、サービスを提供する本人を載せる方が効果的とされています。

ウェブチャットを導入する

Drift.comが実施した大規模調査で分かったのは、新規リードとの接触は最初の5分が非常に重要だということです。したがって、リードに不明点がある場合は、その場で即対応、即解決というのが理想となるわけですが、その際、ドイツ語圏ではウェブチャットの導入が最善策として認知されており、実際に多くの企業が導入しています。

日本でもチャットボットはよく目にしますが、それよりもLINEを活用したLステップの方がより注目されているという感触です。ですが、LINEはドイツではほぼ活用されていないため、第一候補としてウェブチャットの導入を検討するのが賢明です。

ユーザーのニーズに合ったコンテンツを提供する

これも当たり前のように思えて、非常に難しい項目です。よくある例として、トラフィックは多いのに、コンバージョン率が低いというケースです。この場合、自分たちが意図していないキーワードで上位に入ってしまっている、もしくはそのキーワードを検索する人が実は違うコンテンツを探している可能性があります。

こういったことが発生したらどのように対応すべきなのでしょうか?まずはGoogle Analyticsを使い平均滞在時間を確認しましょう。この滞在時間が明らかに短ければ、タイトルと内容が乖離していると推察できます。タイトルを見てクリックしたということは、ユーザーは一度は必ず「このページに自分の欲しい情報があるかもしれない」と思ったはず。そして入ってみたら、「なんか違う」とページを去っているという行動が推測できるわけです。

また、Google Search Consoleも有力なツールの一つです。この俗にいう „サチコ“ は、ユーザーがLPを訪れる前にどんなキーワードで検索したかを教えてくれます。例えば検索されたキーワードがページ内に含まれていなければ、「では、そのキーワードを入れよう」、もしくは「そもそもキーワード戦略が間違っていた」と気づくことができます。

GAなどで分析する

FOMO(取り残されることへの恐れ)を活用する

FOMO(fear of missing out = 取り残されることへの恐れ)とは人間の心理的感情の一つです。日本と同様、欧州でもこの心理学を取り込むことでコンバージョン率は改善します。

具体的には、「残り3点」「割引終了まであと3日」といった時間や個数を限定します。このような一文がボタンの隣あるだけで、コンバージョン率が高まるという研究データがすでに揃っているのです。

ただし、やり過ぎは禁物。もし、本当はもっとあるのに残り3点と煽って嘘がバレると、著しく信用を落とすことになりますし、そもそも企業に相応しい行動ではないでしょう。

行動換気する言葉をCTAボタンに入れる

LP最適化の肝は、やはりCall to Actionという名の通り、CTAボタン内の文言と言えます。ここの行動換気が不明瞭であったり、魅力的ではないと、コンバージョンには至らないでしょう。

ドイツで効果的だと言われるフレーズは、「Sichern Sie sich jetzt Ihre kostenlose Vorlage(今すぐ無料のテンプレートを獲得しよう)」。日本でもこのような資料の無料ダウンロードは、ユーザーにとって行動の敷居が低いため、リード獲得をしやすい施策です。

逆に、「absenden(送る)」のような当たり障りのないフレーズは、刺激が少なく、避けた方がいいと知られています。また、ここで使うフレーズは、ヘッドラインと温度感を合わせるのがコツです。要は、レイアウト、デザイン、言葉遣いなど全てが一貫しているかどうかを常に注視してください。

フォーム入力の項目を最小限にする

企業側は、どうしてもユーザーの情報を一つでも多く欲しがります。これはある意味当然の欲求で、一つでも情報が多い方が、より最適なオファーを提供できるから。しかし、ここで一歩我慢してフォーム入力の項目を減らせば、リードの数が倍増する確率が上がります。

ですから、リード獲得後のナーチャリングやセグメント分けに必要なデータのみを回収しましょう。

例えば、メルマガに登録させたい場合、意外とメールアドレスの獲得だけで十分なことがあります。ユーザー側もただ情報がほしい、自分の興味のある分野をフォローしておきたいだけ、という心理状況で、例えば「役職名」「会社規模」「電話番号」さらには「FAX番号」まで必須入力項目とされたら、ほぼ確実に登録をあきらめるでしょう。 ここではあくまで深追いせず、それよりもメルマガの内容で勝負し、購買換気した方が好印象に繋がるはずです。