世界とドイツ語圏のコンテンツマーケティングの動向

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Yuki Nagahori

Yahtec Japan代表 - 日本語・英語・ドイツ語のトリリンガル。日欧間のウェブマーケティング、経営企画、事業立ち上げ支援担当。

ヨーロッパは、アメリカ全土とほぼ同等に近い市場規模を誇り、購買力が高い国々がひしめき合い、子会社を構えるだけで箔が付く、日本の企業にとっては是非とも進出したい魅力的なマーケットです。

故に、すでに進出を果たした日系企業は数知れず、ドイツを筆頭にイギリス、フランス、オランダ、スペインを合わせると日系企業拠点数は4,000を上回ります。

しかし、膨大な資金力や社内にノウハウが蓄積された超大手を除けば、B2B・B2Cに関わらず現地でローカライズされたマーケティング施策を実施できていないところが多く、せっかくの商品力とブランド力が宝の持ち腐れ状態となっているのです。

本稿では、マーケティングの未来とすら言われる「コンテンツ・マーケティング」にフォーカスし、世界及びドイツ語圏の動向、そしてB2BとB2Cそれぞれにおけるコンテンツ・マーケティングの動向を紹介します。

コンテンツマーケティングとは?

コンテンツマーケティングとは、企業がオウンドメディア内のコンテンツを充実させ、それを通じて顧客を獲得する一つのマーケティング手法です。

より具体的な例を挙げると、公式ツイッターアカウントで有益な情報を定期的にツイートし、フォロワーを増やして購買へ繋げる、または、良質なブログを定期的に公開し、読者から「お問合せ」してもらい営業へ繋げる、ないしはオンラインショップへ誘導し自社商品を購入してもらう、というような訴求がコンテンツマーケティングです。

コンテンツマーケティングの世界的なトレンド

日本はもちろんのこと、世界的にもコンテンツマーケティングに注力する企業は増えており、アメリカ、イギリス、カナダの78%のマーケティング部門の責任者が…

  1. コンテンツマーケティングがこれからのマーケティング戦略
  2. コンテンツマーケティングの予算を増やす

…と考えています。

参考:Verschärft Deutschland den Trend zu Content Marketing?

では、もう少し具体的な数字をもってして世界のトレンドを把握してみましょう。今回参考にするデータは、HubSpotが発表した „Marketing Report 2021“ です。

調査対象国:USA、カナダ、UK、ドイツ、フランス、アイルランド、オーストラリア
対象者  :マーケター
対象者数 :1500名以上
業界の割合:B2B—36%, B2C—53%, 非営利団体/国営—8%

コンテンツマーケティングを実施した企業の割合

1500人以上のマーケターのうち82%が、コンテンツマーケティングを行っているという回答でした。昨年の調査では「はい」と答えた人が70%だったため、1年間で約12%増加したことになります。理由は、コロナによるデジタルマーケティングの重要度が高まったこともありますが、本質的な理由はやはり単純に時代の変化です。

コンテンツマーケティングを行った企業数(2021年版)

ちなみに、このうち初めてコンテンツマーケティングを取り入れ、予算を獲得したという回答者が28%に上り、昨年に比べ17%拡大しました。今までは従来通りの営業や従来通りの広報活動をしていたが、コロナにより新たな可能性に投資した、という背景が推察されます。

2021年の予算の変化

では、次は予算の増減に着目します。下図の通り、2021年度、63%ものマーケターがコンテンツマーケティングの予算を増やしています。

コンテンツマーケティングへの予算増減(2021年版)

予算を追加した理由は明記されていませんが、経営陣が予算拡大を許可したということは、ROIないしは費用対効果が悪くなかったから、もしくは中長期的に企業の収益に価値をもたらす、と判断されたからでしょう。

中でも特に注力されたメディア

これからコンテンツマーケティングを始めようとしている企業、もしくは効果に満足しておらず、改善策を模索している企業にとっては、「どのメディアのコンテンツを拡充させたらいいのか?」というのも大事な着眼点のはずです。

コンテンツマーケティングの主軸となったメディア(2021年版)

ショート動画が時代を席巻していますが、動画の尺に関わらず、視覚と聴覚に同時に働きかけ、分かりやすくユーザーに説明ができるのが動画の最大の強みです。アマゾンにある商品網でも動画付きのものとそうでないものでは販売数に大きな差が生まれます。

B2Bにおいても、扱っている製品やサービスがニッチであったり、専門的であればあるほど、動画による分かりやすい説明というのはユーザーフレンドリーとして認知されます。ただし、だからと言って動画コンテンツに手を出すことが必ずしも正解だというわけではありません。

一本の動画の公開にかかる工数や費用は、ブログ一記事より圧倒的に高額になるケースが多いです。一度自分で自社で動画作成を行った方はご存じでしょうが、構成を練る→台本を作る→撮影する→編集する→サムネを作る→公開する、この一連の作業は予想以上にハードワークです。

費用対効果を考え、状況に応じて、ホワイトペーパーやブログの更新を戦略の主軸に据えるのも賢明な手段となるでしょう。

ドイツ語圏のコンテンツマーケティングの動向

続いて、ヨーロッパの中でも日系企業が最も進出しているドイツ語圏にフォーカスし、コンテンツマーケティングの動向をチェックしてみましょう。参考にするのは、ドイツ最大の統計会社Statistaの「Content Marketing Trend Study 2021」です。

ドイツ語圏のB2Bの予算増減について

2020年の時点でコンテンツマーケティングの予算を追加した企業は63%でしたが、その流れが2021年はさらに顕著になり、75%にまで拡大。さらに42%の企業が「大幅に追加」と回答しており、ドイツ語圏のB2B業界でも如何にコンテンツマーケティングがビジネス拡大の一翼を担っているかが窺えます。

ドイツ語圏のコンテンツマーケティングの動向(B2B)

ドイツ語圏のB2Cの予算増減について

逆にB2Cは、「大幅に追加」と回答した割合は昨年と比較して変化していません。それでも「やや追加」を含めると予算追加に踏み切った企業の割合は+16%となっており、同じくコンテンツマーケティングを強化しています。

もう一つの考察としては、B2Cの方が元からコンテンツマーケティングに力を入れてた傾向があるため、さらに追加するのではなく、「追加はせずとも、今まで同様に力を入れていく」といった意味で、予算を削減する企業の割合が少なく、「同じ」と回答した割合が多くなっています。

ドイツ語圏のコンテンツマーケティングの動向(B2C)

まとめ

結論として、欧米、そしてドイツ語圏のコンテンツマーケティングの立ち位置は年々盤石になっており、逆にここを疎かにすると競合他社に置いていかれるリスクすら発生していると言えるでしょう。

また、コンテンツマーケティングは基本的にインタラプション・マーケティングの対極にあると考えられており、顧客フレンドリーな次世代のマーケティング手法であることは間違いありません。

インタラプション・マーケティング(Interruption Marketing)とは、TV広告のように、顧客が何かを楽しんでいる体験を中断させる、すなわち邪魔をして自社の方を振り向かせるマーケティング手法のこと。